旧 浜松鉄道について
 
 浜松鉄道 (はじめは浜松軽便鉄道、後の遠州鉄道奥山線) は、1964年(昭和39年)10月31日をもって廃線となった鉄道です。板屋町・東田町・遠鉄浜松駅(現在の遠州病院駅付近)から奥山駅までの約26kmを結んでいました。


 当時はまだ国鉄二俣線が開通しておらず、また奥山には方広寺半僧坊があったため、鉄道建設が待たれていました。加えて三方原は茶や桑の産地でもあり、貨物需要も見込まれました。
 1911年(明治44年)、浜松を起点として奥山までの軽便鉄道の敷設の発起人会が開かれました。発起人総代には、細江町の旧家出身で衆議院議員でもあった伊東要蔵らが選ばれ、設立許可申請書等に調印をしました。
 翌1912年(明治45年)3月に免許が下付され、同年(大正元年)10月に、浜松軽便鉄道が創立され、伊東氏が社長に就任しました。
 測量が翌1913年(大正2年)より始まり、本格的な工事は1914年(大正3年)1月から始められました。元名残隧道(亀山トンネル)の掘削と都田川の祝田鉄橋の敷設が工事の難所となりました。
 こうした工事を経て、1914年(大正3年)11月30日に元城~金指の約16kmが開通しました。開業時の車両にはドイツのアーサーコッベル者の蒸気機関車と国産の50人乗りの客車、有蓋・無蓋貨車がありました。 元城~金指間を63分で結び、5時半から19時まで10往復しました。
 1914年(大正4年)に株主総会で浜松鉄道株式会社に会社名を変更し、この年の9月に板屋町~元城間の0.8kmが、12月に金指~気賀口間の約2kmが開業しました。
 しかし、気賀から奥山までは、用地買収のトラブルや浜松鉄道自体の経営難から難航し、開業したのは1922年(大正12年)になってからでした。
 全線開通後、大正時代末から昭和初期にかけては、開業時よりも乗客数は増えていったものの、経営は財界の不況・不景気のため芳しくありませんでした。
 また、1927年(昭和2年)に気賀自動車株式会社が路線バスの運行を開始すると、1929年(昭和4年)と翌年にガソリン車を新造し、乗車時の快適さの向上をはかり対抗していきました。

 戦時体制下では、沿線に飛行連隊爆撃演習場の演習廠舎ができ、軍部の要請により1939年(昭和14年)に廠舎口駅が設置されたり、
 翌年には、軍事機密上の理由から所在名を示す駅名を変更(廠舎口→曳馬野、飛行連隊前→小豆餅、連隊前→上池川)したりしました。
 軍事基地建設の資材を貨車で輸送することや沿線基地の多くの軍人の利用などの戦時輸送で、浜松鉄道は黒字化を果たしました。
 ちなみに、太平洋戦争前の1938年(昭和13年)に国鉄二俣線が金指まで延伸し、浜松鉄道と交差することとなりました。 このような場合、後から開業した線が陸橋等を築いて昔からの線を跨ぐのが通例ですが、二俣線の場合は国鉄東海道本線の非常時迂回線と考えられていたことからか、浜松鉄道の方が陸橋を建設し二俣線を跨ぎました。
 また、1941年(昭和16年)に、浜松側の起点が板屋町から東田町に変更されました。
 浜松鉄道は、1945年(昭和20年)の空襲で大きな被害を受けました。

 戦後の1947年(昭和22年)、浜松鉄道は遠州鉄道と合併し、遠州鉄道奥山線となりました。
 1950年(昭和25年)には、合理化の一環として曳馬野までを600Vで電化し、非電化区間の列車との併結運転も行われました。
 1951年(昭和26年)には、非電化区間での蒸気機関車を全廃し気動車に切り替えました。
 1958年(昭和33年)に、起点を遠鉄二俣電車線の遠鉄浜松駅に変更しました。
 しかし、沿線人口がそれほど多くなく、貨物輸送も低調で、モータリゼーションの前で苦戦を強いられ、1963年(昭和38年)に気賀口~奥山間が廃止され、翌1964年(昭和39年)10月末で全区間廃止になりました。

 
 車両は、自社発注車に加え、鉄道省などで使用されていた客車なども在籍していました。
 無煙化後の気動車にはキハ1801~1804が使用されていました。このうちキハ1804のみ日野DS40型エンジンを搭載し、他の車両はいすゞDA45型エンジンを搭載していました。
 キハ1803は奥山線廃止後に石川県の尾小屋鉄道に譲渡され、1977年(昭和52年)まで使用されました。現在は有志の手により小松市立ポッポ汽車展示館で動態保存されています。

 キハ1804は奥山線廃止後に岩手県の花巻電鉄に譲渡され、1969年(昭和44年)まで使用された後に廃車されました。
 
 1920年(大正10年)の板屋町駅のダイヤ
 ・7:20、9:00、10:30、12:30、14:30、16:00、17:30、19:30発の8本
 1941年(昭和16年)の東田町駅のダイヤ
 ・6:19、7:11、7:58、8:24、9:23、10:31、11:31、12:28、13:50、15:01、15:55、16:59、18:19、20:14発の14本
 
※浜松鉄道グループは架空の鉄道会社です。実在しません。